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歴史散歩 宇治茶道場匠の館で茶香服(ちゃかぶき)を体験 京都府茶業会議所事務局次長 日本茶インストラクター  極山 映一さん

茶かぶきは古来からあったお茶の審査技術(聞き茶)ですが、南北朝時代、ばさら大名たちの間で華やかな「闘茶」としてブームになりました。その後幕府の禁止令や茶道の確立とともに茶香服(茶歌舞伎)の形式が整えられ、現代まで継承されています。今回は宇治茶道場匠の館を訪ね、京都府茶業会議所事務局次長の極山(きわやま)映一さんの解説で、茶香服を体験してみました。

茶香服の流れ

《1》茶の種類と茶葉の確認

まずはテーブル席につき、簡単な説明を受けます。そして使われるお茶を確認します。初心者向きの場合、例えば次のような5種類が用意されます。

  • 【花】宇治玉露(販売価格1000円/20g)
  • 【鳥】宇治碾茶(販売価格2000円/30g)
  • 【風】宇治煎茶(販売価格1000円/50g)
  • 【月】宇治茎茶(販売価格1000円/80g)
  • 【客】宇治番茶(販売価格500円/100g)

初心者用には、わかりやすく番茶や玄米茶などが混ぜられますが、客のレベルに応じて種類を変えるそうです。ちなみに上級者やプロの場合は玉露が2種類、煎茶が3種類の計5種類を使うのが原則です。

使われる種類を確認したあと、実際の茶葉の現物が入ったお盆が回ってきます。「こういうお茶が【花】である、と覚えてもらうためです。専門家はここで香りの特徴を確認したり、粉の量を観察して、出てくるお茶を想像するんです」と極山さん。

《2》茶が配られる

続いて煎じ手さんという係員によって全員分のお茶が淹れられ、配手(はいしゅ)さんという係員が各自の元にお茶を運んできますので受け取ります。この時注意したいのは、お茶はその茶葉の味を最大限に引き出すような淹れ方ではないということです。極山さんによると「実はお茶の欠点当てなんです。どのお茶も同じ条件とするようにルールが決まっていますから。絶えず100度の熱湯を沸かしておき、20人分の量を砂時計を使って1分30秒出します。それを色が均一になるようにつぎ分けます」。

《3》聞き茶

いよいよ配られたお茶を聞いていきます。「プロ級になると、飲まずに色と香りとだけで判別する人もいます。たくさん飲んでしまうと舌が麻痺してきて、味と香りの差がわからなくなってくるからです」と極山さん。しかし、慣れない素人には、じっくり味わってみても玉露と煎茶の区別すらつきません。ゲームを進めていくにつれてわかってくるのですが、「味」だけでなく、「香り」と「色」は大きな手がかりになります。

《4》特徴を記録する

手元にはあらかじめ1枚のシートが配られています。そこに飲んだお茶の特徴をメモしていきます。用紙の項目は【外観】【香気】【水色】【滋味】【その他】とあり、味や香りの特徴を自分なりの表現で記入するのですが、慣れていないとこの表現の仕方にも戸惑います。ちなみに【滋味】ならば「薄い」や「爽快」など、【水色】ならば「赤味あり」や「黄金色」などと記すそうです。
「このゲームで一番面白い、と皆さんが言われるのは、実は心理戦なんです。プロの競技では私語は厳禁ですが、素人の場合はここで自分の予想を披瀝(ひれき)しあいながら駆け引きするのも面白さのひとつです」と極山さん。

《5》回答

全員が飲み終えると配手の方が茶碗を回収し、今度は回答用のシートを持って回って来ます。現在では【花】【鳥】【風】【月】【客】のシールを、自分の名前の書かれた列に裏向けに貼って回答する方法です。かつては札を投札箱に投じる方式でしたが、現在はほとんど使われることはないそうです。一度使ったシールはその回ではもう使えなくなりますので、一煎目にどのシールを貼るのかは大変重要です。回答した後でも、「ああ、さっきの選択は失敗だった、やはりこっちだった」などと他の参加者と会話しながら駆け引きを楽しめるのが茶香服の醍醐味です。

《6》答え合わせ・採点

全員の回答が終わったら、続いて二煎目、三煎目…と5度同じことを繰り返していきます。全員が五煎目を味わい回答した時点で1回目の競技が終了となり、正解が発表されます。5つ全て合えば5点、3つ合えば3点、2つなら2点、1つなら1点。0点の事は“チョット”と言うそうです。最終的にはこれを合計5回繰り返しますので、25点満点となります。「初心者の方なら10点取れれば上出来ではないでしょうか」と極山さん。

引き続き2回目の競技が始まります。2回目以降も出てくるお茶は1回目と同じ種類のもの。もちろん順番は入れ替わって出てきます。「1回目で間違えたから次はこれだ、と絶対の自信をもって回答しても、また外れてしまうこともよくあるんですよ。記憶力と推理力と知力を総動員しなければなりません。すごく頭を使うゲームなんです」と極山さんは言います。

おいしいお茶の淹れ方

茶香服は競技としてのお茶を淹れるため熱湯を用いますが、実はお茶の味の決め手はお湯の温度なのだそうです。日本茶インストラクターでもある極山さんにお聞きしました。

お茶は淹れ方によってまったく味が違ってきます。たとえどんなに良いお茶でも熱湯で手早く淹れてしまえば、みんなただ濃いだけの渋いお茶になります。“いいお茶ほどぬるいお湯で淹れる”というのが基本です。

お茶の旨みはテアニンという成分で、溶け出す温度に特徴があります。だいたい60度くらいで溶け出します。一方、カテキンというのが渋みの成分で、熱いお湯だと早く溶け出し、温度が下がるほど溶け出すのに時間がかかり、低くなると出ないという特徴があります。玉露のようないいお茶にはテアニンの旨みの成分がたっぷり含まれていますので、温度を下げてじっくり淹れることで旨みや甘みだけを引っ張ることができるんです。

実は、お茶が余りにも生活に密着しすぎて、本来のお茶の淹れ方が忘れられているのが実状です。お茶は「最上級のおもてなし」なんです。昔はお客様の訪問を受けると、その家のご主人が茶道具を持ってきて皆さんの前でお茶を淹れるという文化でした。水屋でお茶を淹れるとお客様を待たせてしまいますが、お客様の前でお茶を淹れると、待たせることなくお話もできます。そういった本来のお茶の淹れ方を「宇治茶道場匠の館」ではインストラクターがお教えしています。ぜひ一度本当のお茶をご体験ください。

宇治茶道場 匠の館
宇治茶道場 匠の館
住所 宇治市宇治又振17-1
電話番号 0774-23-0888
営業時間 11:00〜17:00(ラストオーダー16:30)
定休日 水曜