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今月の特集 地元のとっておき ここだけ旅情報 「圧巻」にめぐり合う紀三井寺

西国三十三ヶ所の第2番札所の観音霊場・紀三井寺。本堂へ向かう231段余の石段は、とても一気に登り切れるものではない。しかし、息を切らして登った先には、本誌で紹介しきれなかった見どころがたくさんあった。

豪商のルーツ「結縁坂」

60段の「還暦厄坂」の向こうに本堂が見える。

本誌でご紹介した紀伊国屋文左衛門と「結縁坂(けちえんざか)」の「ゆかり」にはこんなエピソードがある。

若き日の文左衛門は母を背負ってこの石段を登っていたが、途中で草履の鼻緒が切れてしまい難儀していた。それを見かねて鼻緒をすげ替えてくれたのが、紀三井寺とは湾を挟んだ向かいの和歌浦にある玉津島神社の宮司の娘おかよ。それが縁となって二人は結ばれ、文左衛門は宮司の出資で船を仕立てミカンと木材を江戸へ送って大儲けし、やがて豪商となった。以来、結婚と出世のきっかけとなった石段は、結縁坂と呼ばれるようになったという。

町並みの向こうに和歌浦が望める絶景だ。

石段は楼門の手前から始まっている。まずは土産物屋が並ぶ参道から二十数段の石段を上がる。朱塗りの楼門は、室町時代の永正6年(1509)の建立で国指定の重文だ。そこから先は石段が続き、その途中に三井水のひとつ「清浄水」がある。為光上人が紀三井寺を開創した頃、上人の前に忽然と現れた美女が、身を投じて龍に化身したと伝えられる湧水で、小さな滝のように流れ落ちている。その周りには句碑が建てられており、せっかくやって来たのに、すでに散り始めていた桜を仰ぎ見て詠んだ「見上ぐれば 桜しもうて 紀三井寺」という芭蕉の句碑も。

そこから先は33段の「女厄除坂」、42段の「男厄除坂」、そして61段の「還暦厄坂」と続く。息を切らし、休み休み上がった境内から見る和歌浦の眺めは、これまでの疲れが吹き飛ぶ晴れ晴れしいものだった。

圧巻の祈願杓子

おびただしい数の杓子(しゃもじ)が奉納された「大願洞」。

本堂は江戸時代の宝歴9年(1759)建立で県指定の重文。お参りを済ませ、ふと横をみると「祈願杓子」なるものが。杓子に名前と願い事を書き、横に吊り下げられた大きな杓子に3度打ちつけてから奉納するというもので、さまざまな願い事が書かれた杓子が何本も立てかけられている。さっそく「開運」と書いて奉納。杓子は「幸運をめし取る」として縁起のいいものとされているそう。果たしてどんな運が開いてくれるのだろうか。

その後、本堂地下の「大願洞」へ。中に入ると、西国三十三ヶ所それぞれの本尊を模したものが祀られているが、その壁面もおびただしい数の杓子で埋め尽くされている。多くの人々の祈りが捧げられた、その様はまさに圧巻だった。

日本最大の千手十一面観音菩薩

黄金に輝く大千手十一面観音菩薩の迫力に圧倒される。

圧巻といえばもうひとつ、新仏殿の大千手十一面観音菩薩も見もの。平成20年5月に落慶法要が営まれた観音像で、高さ約12メートルは、木造の立像仏としては日本最大を誇るそう。新仏殿の3階では、総漆金箔張りで燦然と光り輝く尊顔を目の当たりにすることができる。このアングルで観音様を拝めることもそうはない経験なので、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。


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